協同乳業研究所 農学博士 松本光晴のブログ

ビフィズス菌LKM512研究スタッフ松本光晴博士が
お腹のためになる情報をお届けします。

2012年02月10日LKM博士
先日発表した論文(Scientific Reports)解説します④ ―方法―

もう一度①から読んでもらえれば、今日もわかり易いと思います。

代謝産物を網羅的に調べる研究には特別な名前が付いておりまして"メタボロミクス"と言います。
代謝産物は英語でメタボライト(metabolite)、網羅的に分析する学問はオミクス(omics)という接尾語を付けますので、あわせてメタボロミクス(metabolomics)というわけです。

昨日まで書いてきたように、CE-TOFMSでメタボロミクスを行えば、腸内常在菌の代謝産物の全貌が解明できそうな予測が立つと、如何に文句のつけようのない試料を準備できるかということが重要になってきます。
そこで実験方法は慎重に考えました。

一つ目は細かい手法ではなく、実験系全体の構想です。
明確に腸内常在菌の影響を調べるためには、一切菌が付着していない無菌マウスというものを使うのがベストだと考えました。
しかし、単純に同じ系統の無菌マウスと普通に菌が棲んでいるマウス(通常菌叢マウス)を用意して比較したら突っ込みどころ満載です。

大腸では代謝産物の吸収もあるでしょうから、生体側の条件を極力揃えました。
つまり、同時に生まれた兄弟を2つに分けて遺伝的差異を小さくしました。
マウスは大体8-12匹の子供を一度に産むので、オスだけ選び(6匹)、それをしばらく無菌的に飼育しておきます。
そして生後4週目に、2つのグループに分けて、片方(3匹)はそのまま、もう一方(3匹)は通常菌叢マウスの糞便懸濁液を経口投与し、通常菌叢マウスを作りました。
そして同じ条件で育てて、生後7週目に大腸内容物を回収したのです。

また、1度だけの実験ですと再現性(同じことをやると同じ結果が得られるのか?)という点で文句がつく可能性がありますので、
同じ父親と先の母親の妹マウスとの間で子供を産ませて、
全く同じ実験を繰り返しました。
これ位の計画を立てておけば、実験系として突っ込まれる可能性は低くなります。

つづく

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