協同乳業研究所 農学博士 松本光晴のブログ

ビフィズス菌LKM512研究スタッフ松本光晴博士が
お腹のためになる情報をお届けします。

2021年12月24日LKM博士
「化学と生物」の表紙は私の描いた絵

「化学と生物」の今月号(2021年12月号)の表紙を飾っているのは、なんと、私が寄稿した解説文の図です!
https://katosei.jsbba.or.jp/img_view.php?mid=180

20211224.JPG
この解説は、
腸内細菌叢の代謝制御によるポリアミン産生技術を用いた機能性食品の開発
~腸内細菌に欲しいモノを作ってもらうのは難しい~
というタイトルで、当社で販売しているヨーグルトに使われている技術の研究やその機能性を解説したものです。

その中で、ヨーグルトを食べると腸内で増えるポリアミンが動脈硬化予防に有用であることを示しているのですが、その作用機序(仮説を含む)を血管の模式図で解説した図が表紙に使われました。

折角なので、この図をできるだけ簡単に解説します。

以下に示す4つの作用で動脈硬化に罹りにくい血管を保持できると考えています。

1.ポリアミンがオートファジー(細胞内のゴミを食して細胞の健全性を保つ作用)を誘導し、血管内皮細胞(血管の内腔側の一層の細胞で血液と常に触れている)と血管平滑筋細胞(血管内皮細胞より外側の層を形成している細胞)の健全性を高めます。つまり血管を形成している主要な細胞群が正常に働き元気な血管の維持に役立つと考えられます。この機能に関しては現在研究を更に進めています。

2.高脂肪食などを摂り過ぎて血液中を浮遊している悪玉コレステロールが血管内に侵入して炎症が生じるのが動脈硬化症の初期現象です。この炎症は、血液中の免疫細胞(リンパ球の一種)が血管組織の中に入り込むことで起きるのですが、ポリアミンは免疫細胞が血管組織へ入るための足場への接着を防ぎます。

3.血管組織内では悪玉コレステロールを食べて処理しようとする免疫細胞が、際限なく侵入してくる悪玉コレステロールを退治するために、もっと免疫細胞を呼び寄せます。すなわち援軍を求めます。これがまさに炎症の悪化なのですが、この援軍を求めるため狼煙となる化学物質(専門的にはサイトカインという)の分泌をポリアミンは抑えます。

4.さらに病態が進行して、血管組織内に炎症で生じた免疫細胞の屍骸などが溜まります。この死骸等が溜まってドロドロのお粥のようになり発達する動脈硬化症をアテローム性動脈硬化症といいます。これが血管組織を硬くする直接的な原因ですが、さらに病態が進むとその血管組織が裂け、そこに血栓ができます。これにより血管が塞がると心筋梗塞や脳梗塞などに発展し、死に直結してしまいます。ポリアミンは、血小板の凝固を抑える作用もあり、血栓ができ難くなります。

少し難しいですが、何となくでも、ポリアミンは凄い機能を持った物質だと理解してもらえればうれしいです。

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