協同乳業研究所 農学博士 松本光晴のブログ

ビフィズス菌LKM512研究スタッフ松本光晴博士が
お腹のためになる情報をお届けします。

2012年02月13日LKM博士
先日発表した論文(Scientific Reports)解説します⑤ ―方法つづき―

(「CE-TOFMSって何?」って方は①から読んで下さいね)

今日は、④のような方法の大局ではなく、極めて細かい条件の検討です。

私がもう一点こだわったことは、大腸内容物(ウンコになる直前の大腸内にあるプレウンコ)から代謝産物の抽出条件です。
健康に影響する腸内常在菌の代謝産物(産生物)は、菌体外に放出される物質でなくてはならず、菌体内の代謝産物は除かなくてはなりません。

しかし、これまで、CE-TOFMSメタボロームで分析されてきた実績のある研究対象は菌体内や細胞内の代謝産物で、菌体外のものは対象外でした。
菌体内の代謝産物を調べるには、菌体を破壊して内容物を得る必要がありますので、
前処理は有機溶媒(アセトニトリルやメタノール)で抽出していました。
確立されていましたが、今回と目的と正反対なので使えません。

従って、抽出法に関しては一から検討しました。

ウンコを何度も何度も使って...。
ウンコをある条件で抽出しては、菌体が破壊されて、菌体内の遺伝子が抽出液中に出ていないのかのチェックを繰り返しました。
また、菌体が破壊されない条件でも、菌体外成分の抽出が不十分だと意味がありません。
CE-TOFMSは電圧をかけ分析するので、それに影響が出る塩類も大敵でした。
苦労しましたが、なんとか菌体を破壊せず、ウンコ中の菌体外代謝産物をきっちり抽出し、CE-TOFMSの分析にも影響しない条件を見出したのは半年後のことでした。

論文審査の中で審査員に突っ込まれましたので、そのデータはSupplementary Information(付属データ)の9番目の図にあります。

ウンコ抽出方法の検討というマニアックな中身ですが、興味のある方は、論文の下の方のSupplementary Informationのファイルをダウンロードして頂ければ検討した内容を見ることができます。

「そんな細かい点にまでこだわって実験してたんだ!」
と思って頂ければ幸いです。

つづく

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