2012年02月08日LKM博士
先日発表した論文(Scientific Reports)解説します② ―背景―
今では、腸内常在菌が健康に密接に関連していることは一般の方々も知っています。
大半の方の腸内常在菌に関する理解は、
「ビフィズス菌のような善玉菌は体に良いことをして、反対に悪玉菌は悪いことをしているので、善玉菌を増やせば良い」というものをベースにしたものだと思います。
研究分野でもこの考え方がベースにあり、これまで何十年間も、腸内常在菌の菌種構成を調べる研究が中心に行われてきました。すなわち、
どの菌が善玉菌なのか? あるいは悪玉菌なのか?
病気あるいは健常なヒトにはどんな菌種が棲息しているのか?
というアプローチです。
でも、今の所、「腸内常在菌は1000種類以上存在し、一人当たりは160種程度で構成されており、個体により棲息菌種が大きく異なり、個体差が極めて大きい」という程度のことしか自信を持って言えません。少なくとも私は(10年以上菌種構成を調べる研究を頑張ってやってきたのですがね...)。
さて、質問です。
どのように腸内常在菌は健康に関与しているのでしょう?
そもそも善玉菌や悪玉菌は、腸内で何をしているのでしょう?
たぶん、これに明確に回答できる研究者はいないでしょう。
私は、彼らが大腸内で作る産生物(専門的には細菌の代謝によって産生される物質なので「代謝産物」と言います)が健康に強く影響していると信じています。
理由は簡単。
分子量が小さく(サイズが小さい)、大腸の粘液に浸透でき、大腸の細胞に直接的に作用すると同時に、血液中にも吸収され全身を巡ります。
良く考えて下さい。悪玉菌がいるだけでは何も起こりませんが、悪玉菌が有害物質を産生することで、それが細胞を傷つけてガン化が起こったり、炎症が生じたりするのです。
しかし、腸内常在菌の代謝産物に関しては全く研究が進んでいません。
注目されている代謝産物は、ほんの10種類程度ではないでしょうか?
そもそも、どんな代謝産物が存在するのかすら知られていません。
調べたい、調べたい、調べたいー。
昨日も述べた知的好奇心というやつですね。
つづく