協同乳業研究所 農学博士 松本光晴のブログ

ビフィズス菌LKM512研究スタッフ松本光晴博士が
お腹のためになる情報をお届けします。

2013年07月25日LKM博士
海外出張報告 ―ゴードン会議出席①―

ふとカレンダーを見ると、早いものでゴードン会議が終わって1ヶ月経っている。
この辺りで色々整理しておかないといけないので、
会議中にとったメモ等を見て思い出したり、知り合った人に連絡したりしている。

本題に入る前に、これまでゴードン会議やポリアミンのことを何度か紹介してきたが、
再度詳しく背景を説明しておきたい。

ゴードン会議とは、特定の研究分野を対象にした70年以上の歴史を持つ研究会議で、
チェアマンの許可を得た最先端で活躍する専門家が世界各国から集まり、
未発表データを含む最新の研究成果や考え方を発表し、直接的に議論する場である。
そのため、通常の国際会議と異なり、要旨集もなければ、会議の内容も口外しないルールになっている。
ポリアミン部門の場合は、2年に1度アメリカ・ニューハンプシャー州のド田舎リゾート地に1週間泊まり込みで開催され、朝から夜9:30位までポリアミンの事を延々と話す。

ポリアミンとは、細胞が生きていく上で必須の成分で、
特に元気な細胞は自らポリアミンを産生して活動している。
しかしながら、加齢に伴い、細胞はポリアミンを産生する能力が低下する。
私はポリアミンの減少が老化のスタートの主要因の一つと考えている。
つまり、健康の維持、老化予防のためにポリアミンは必須で、
「自分で作れないなら、お腹の中にいる腸内細菌に作ってもらおう」
と考え、そのための方法や効果の検討が、私の研究の一つである。

一方で、このポリアミンはガン細胞も利用する。
細胞を元気にする物質なのだから、利用しない理由はない。
ガン細胞が自身の増殖のために、ドクドクとポリアミンを作る。
そのため、ガン細胞がポリアミンを作れないように細工すると活動が低下し、
抗炎症剤などと併せると、ガン細胞は減弱化、消滅するという報告が多数ある。
つまり、ポリアミンを抑えるとガンは抑えられるわけで、
「ポリアミンは悪者だ!」
という考え方が浸透している。

ゴードン会議も後者の考え方の人達で溢れかえっていた。
我々「ポリアミンは良い者派」は超少数派であった。
少なくとも2011年の会議では。
ポスター発表では、
「You are crazy」
嫌悪感丸出しで、何人かに口撃された。
ラクダみたいな顔の人は印象に残っている。

その会議にスピーカーとして招待された。
ポリアミンの健康長寿の話をしろという依頼だ。
天下のゴードン会議の主催者が、我々の存在を認めてくれているのがうれしかった。
また、自分の考えを主張するチャンスなので引き受けた。

ボストンからバスに揺られて会場に着いたのは夕方。
もう逃げられない。
2年ぶりに会場を見ると、前回の攻撃された記憶が甦って来る。
会議中の英語が殆ど聞き取れなかった記憶も。

20130725.jpg
(会議場入口。GRCはGordon Research Conferenceの略である)

その夜、最初のセクションで私の順番はやってくる。
それまで4時間程ある。
時差ボケ、寝不足が酷かったが、必死で原稿を確認した。
話しやすいように修正しまくった。
気が付くと、原稿が激しい添削で汚くなり読めなくなっていた。
「しまった~。覚えるしかない。」

午後8:15 演題に立った。
春日野部屋Tシャツで臨むはずであったが、
緊張して上に着ていたパーカーを脱ぐのを忘れた。

トーク25分間
ディスカッションが別枠で10分間用意されている。
長~い、35分1本勝負の始まりである。

続きは明日にしよう。

前の記事< | トップへ戻る | >次の記事