2011年08月30日LKM博士
ほな、論文解説しますわ⑦ ―考察(凄いことは)―
今日でこのシリーズを終えたいと思います。
考察は最も大変で、最初に立てた仮説が正しかったのか?
この実験でわかったことは何なのか?
過去の近い研究データとの比較も必要ですし、
この研究ではわからなかった事や新たに生じた疑問も提示する必要があるでしょう。
今回のように、ポリアミンのような作用が多岐にわたっている物質が主役だと、その安全性についても熱く述べなくてはなりません。
これらを考察するために、実は補助する図や表がたくさん必要になります。
それがSupporting Informationというもので、Web上では見ることができます。
米国科学誌「PLoS ONE(プロスワン)」掲載図をずーっと下の方に進んでもらえると、下4分の1位の位置にSUPPORTING INFORMATIONと書いた箇所が出てきて、その下にFigure S1, Figure S2・・・Table S1・・・とあります。
クリックしてもらえると、その図や表を見ることができます。
この論文だと、本題の図の他に補助の図が6つに表が3つあります。
これらを使って、考察していることが正しい可能性を示したり、他データとの比較を行ったりしているのです。
補助図6(Figure S6)なんて、わざわざこれだけのために実験していますから。
サポートのための図ですが、これを作るのに何日もかかることが多くて大変で、論文を熟読してくれる方以外には無視されているのでかわいそうな図表です。
さて、色々考察はしましたが、この研究の意義あるいは重要性のみ抜粋します。
第一に、重要なのは、
カロリー制限(ヒトでいう食事制限)なしで哺乳類の寿命が伸びることが確認された食品は、これまでレスベラトロール(赤ワインに含まれる成分)しかなく、これが2番目の食品であるということです。(ポリアミンの直接投与でも同様の成績があるのですが、ポリアミンを試薬の形で食べることは認められていない。)
その他には、
ポリアミンによる大腸の機能維持が、慢性炎症の抑制を誘導し、寿命を伸ばした可能性を示したことも意義があります。
「プロバイオティクスで寿命が伸びた」という事実も大事でしょうね。
何しろ、テレビや新聞では、この部分ばかりが取り上げられるのですから。
「他の大事なキーワード、特にポリアミン、についても書いてや!」
と思うのですが、気軽に、しかも安価で続けられるというのは特筆すべきことでしょう。
ヨーグルト不老長寿説というのが100年前に提唱されていながら、殆ど寿命に関する研究はなされていなかったわけですから。
プロバイオティクス投与で機能性の高い物質(ポリアミン)を大腸内で作らせて保健効果を得た点も大事です。
つまり、プロバイオティクスが直接作用するというより、腸内菌叢を介して産生物を作らせて、それに効果があるというアプローチです。
誰が何と言おうと、ポリアミンを大腸内で作らせるアプローチは我々の専売特許でして、10年以上前から挑戦し続けているものです。
こんな遠回りで証明が難しい無謀なチャレンジは、他の人にはなかなかできないことでしょう。
まだまだ書きたいことはありますが、ややこしくなりますので、
この論文の解説はこれ位にしたいと思います。
今回、マウスの寿命は伸び、報道もされ大騒ぎになりましたが、まだまだ満足していません。
課題はまだまだあるのです。だから面白い。
あっ、そうや!
最後に、強く主張しておきますが、
寿命伸長効果が確認されたビフィズス菌はLKM512のみですから。
他の菌株ではそんな報告ありません。
便乗商品に騙されないで下さいね。