協同乳業研究所 農学博士 松本光晴のブログ

ビフィズス菌LKM512研究スタッフ松本光晴博士が
お腹のためになる情報をお届けします。

2018年10月26日LKM博士
論文が掲載されました(Gut Microbes)

我々とヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ社とで実施した共同研究の成果が、Gut Microbesに掲載されました!
投稿し始めて、2-3年位かかりましたかね。

掲載論文:https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/19490976.2018.1494466
日本語リリース:https://www.lkm512.com/contents/20181025.pdf

専門性が高く、説明するのはややこしいですが、
我々が注目している腸内細菌が作り出す善玉物質ポリアミンが、
アルギニンからどんな経路で作られるのかを、
特殊なアルギニンを使って、追跡した実験結果です。

特殊なアルギニンというのは、
アルギニンを構成している炭素と窒素を重くして目印をつけたものです。
当然、それなりに高額な研究試薬です。
(栄養ドリンクに入っているアルギニンの1万倍とか10万倍とか・・・)
この自然界に存在しない特殊アルギニンをラットの腸内に注入し、
腸内細菌により、どんな化合物に変換されているのかを調べました。
重いアルギニンから作られるのは、当然、自然界には存在しない重いポリアミンなのです。
自然界に存在しない重さなので、質量分析計でしっかりと正確に追跡できるのです。

その結果、
アルギニンが色々な腸内細菌により、様々な化合物に変換され、
最終的にポリアミン(プトレッシン)が生成されることが再確認され、
また逆に、
中間化合物から逆の経路でアルギニンが再合成されている事実もみつかりました。

おなかの中で腸内細菌に利用され、一端消失した物質が、
別の腸内細菌により、その分解物から再び生合成されて復活しているということです。
びっくりしました。

私がこの結果で感じたことは、
各腸内細菌の集合体である腸内細菌叢の物質変換(栄養の利用と排出)は、
我々がわかったつもりで眺めている代謝マップと全く別物であるということです。

腸内細菌の代謝産物が絡む機能性食品等の作用機序を論じるなら、
今回我々が実施したような手法を用いて、丁寧に調べるしかありません。
そうすることで、本当の意味での「科学的根拠を有する機能性食品」に繋がると考えます。

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