協同乳業研究所 農学博士 松本光晴のブログ

ビフィズス菌LKM512研究スタッフ松本光晴博士が
お腹のためになる情報をお届けします。

2021年12月27日LKM博士
「化学と生物」の私の記事はフリーで読めます!

通常、農芸化学会の学会員以外の方は記事が掲載後1年を経過するまで読めないのですが、先日紹介しました私の解説記事は、どなたでもフリーで読めるように設定して頂いているようです。

表紙になったので特別扱い?!!! 

フリーでPDFをダウンロードできますので、興味がある方はご一読下さい。
https://katosei.jsbba.or.jp/download_pdf.php?aid=1502

この解説の中に、本題とは異なる話題として、コラム「ポリアミンと癌」も書いております。
僅か1000文字の短いコラムですが、異端な仮説をベースに研究を進める苦労話を、国際学会での出来事を中心に紹介しております。
高校生などの初学者向けに、専門知識が無くても理解できる内容に仕上げてありますので、読んで頂けると嬉しいです。

2021年12月24日LKM博士
「化学と生物」の表紙は私の描いた絵

「化学と生物」の今月号(2021年12月号)の表紙を飾っているのは、なんと、私が寄稿した解説文の図です!
https://katosei.jsbba.or.jp/img_view.php?mid=180

20211224.JPG
この解説は、
腸内細菌叢の代謝制御によるポリアミン産生技術を用いた機能性食品の開発
~腸内細菌に欲しいモノを作ってもらうのは難しい~
というタイトルで、当社で販売しているヨーグルトに使われている技術の研究やその機能性を解説したものです。

その中で、ヨーグルトを食べると腸内で増えるポリアミンが動脈硬化予防に有用であることを示しているのですが、その作用機序(仮説を含む)を血管の模式図で解説した図が表紙に使われました。

折角なので、この図をできるだけ簡単に解説します。

以下に示す4つの作用で動脈硬化に罹りにくい血管を保持できると考えています。

1.ポリアミンがオートファジー(細胞内のゴミを食して細胞の健全性を保つ作用)を誘導し、血管内皮細胞(血管の内腔側の一層の細胞で血液と常に触れている)と血管平滑筋細胞(血管内皮細胞より外側の層を形成している細胞)の健全性を高めます。つまり血管を形成している主要な細胞群が正常に働き元気な血管の維持に役立つと考えられます。この機能に関しては現在研究を更に進めています。

2.高脂肪食などを摂り過ぎて血液中を浮遊している悪玉コレステロールが血管内に侵入して炎症が生じるのが動脈硬化症の初期現象です。この炎症は、血液中の免疫細胞(リンパ球の一種)が血管組織の中に入り込むことで起きるのですが、ポリアミンは免疫細胞が血管組織へ入るための足場への接着を防ぎます。

3.血管組織内では悪玉コレステロールを食べて処理しようとする免疫細胞が、際限なく侵入してくる悪玉コレステロールを退治するために、もっと免疫細胞を呼び寄せます。すなわち援軍を求めます。これがまさに炎症の悪化なのですが、この援軍を求めるため狼煙となる化学物質(専門的にはサイトカインという)の分泌をポリアミンは抑えます。

4.さらに病態が進行して、血管組織内に炎症で生じた免疫細胞の屍骸などが溜まります。この死骸等が溜まってドロドロのお粥のようになり発達する動脈硬化症をアテローム性動脈硬化症といいます。これが血管組織を硬くする直接的な原因ですが、さらに病態が進むとその血管組織が裂け、そこに血栓ができます。これにより血管が塞がると心筋梗塞や脳梗塞などに発展し、死に直結してしまいます。ポリアミンは、血小板の凝固を抑える作用もあり、血栓ができ難くなります。

少し難しいですが、何となくでも、ポリアミンは凄い機能を持った物質だと理解してもらえればうれしいです。

2021年04月15日LKM博士
農芸化学技術賞を頂きました!

遅ればせながらご報告させて頂きます。
日本農芸化学会の農芸化学技術賞を受賞致しました。
腸内細菌叢を利用して生理活性物質ポリアミンを産生する機能性食品を開発したことを評価して頂きました。
推薦して頂きました辨野義己先生、選考委員の先生方、また研究を一緒に進めて下さいました共同研究者の先生方、そして協同乳業㈱の皆さまに、改めて御礼申し上げます。

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まるで、先日受賞したような内容ですが、実は、これは2020年度の受賞です。
本来、昨年2020年の3月に学会で表彰される予定だったものが、新型コロナウィルス感染拡大を受け、2020年度の大会が中止、授賞式も延期となっておりました。先月やっと授賞式が開催され、賞状等を頂くと共に受賞講演(学会員へはオンライン配信)も行いました。

受賞講演の要旨は学会HPに載っています。
https://www.jsbba.or.jp/wp-content/uploads/file/11-12.pdf

形式上は昨年の受賞で、学会HP等でも発表済みでしたが、授賞式は延期されたため、「内定はしているが正式な受賞はまだ」という雰囲気で、大々的に報告して良いのか否か、心が定まらずに一年間過ごしておりました。
この度、やっと賞状と表彰盾を頂きましたのでブログで報告です。

ところが、1年間経過したためか、あまりテンションは上がりません。
おそらく、時間経過が原因ではなく、コロナ禍で祝い酒を飲みに行くことすらできない現状に幻滅しているからではないかと思われます。
本来、昨年の福岡大会で、関係者を集めて美味い水炊きを食しながら酒を飲み祝おうと勝手に計画していたので(受賞者自らが計画している点は滑稽でしょうが、飲み会好きの性分なので仕方ない)、いまだに落ち込んでおります。

その反動で、先日の授賞式で仙台に行った際は、お客さんが殆どいない居酒屋で、一人で軽く祝杯ということで、生ビール2杯、地酒冷酒3杯、レモンハイ1-2杯(この辺りは記憶がやや曖昧)を、無言で僅か40分間で平らげてしまいました。
おかげで翌朝の授賞式ではやや調子が悪かったです。
驚いたことに、オンライン中継を見ていた知り合い数名からは、「元気なかったですね」と指摘を受けてしまいました(苦笑)。

この授賞に満足せず、さらに本研究を進めていきたいと思います。

2021年03月19日LKM博士
気が付いたら無くなっていた

COVID19が猛威をふるい、1年以上が経過した。
研究関連でも、色々なことが大きく変容した。

私が主戦場とする農芸化学・生命科学の研究分野では、ほぼ全ての学会がオンライン開催になり、共同研究先の大学では密を避けるため満足に実験することができない状況が続いている。

半年位前は、世界的なPCR検査の激増により(増やそうとしない国もあるが...)、PCR用の試薬やマイクロピペットのチップが品薄になり、最近は、ワクチン接種の影響で、使い捨て注射器が品薄になっていると聞く。
但し、これらは、「なくなる」という噂で、皆が慌てて購入することに起因している二次的影響の可能性も否定できない。真意を確かめるつもりはない。

さて、私個人の話をすると、出張や外出がなくなり、殆ど研究所勤務たまに在宅勤務の状態である。
その結果、読書の機会がなくなった。
私の読書は、もちろん科学本も読むが、いわゆる名著や推理小説も積極的に読み、気分に合わせて同時進行で数冊ずつ読んでいた。
存分にあった移動時間をフル活用し読破していた。
しかし、この1年間はゼロ冊である(研究にどうしても必要な書籍は除く)。
昨年1月に読みかけていた本が未だに愛用リュックに入ったままである。
在宅時間に読めばよいと思われるであろうが、出張が無くなって発生した時間は、これまで通り、調べものや論文原稿書きなどに充ててしまう。
つまり、読書のための時間を作る・確保する習慣が全くないのである。

読みたいと思っても、体がいうことをきかない。
寝る前に布団で読もうとしても、眠りの天才である私は、1分間程度で撃沈してしまう。

どうすりゃよいのだろう?
この事実に気付いて2ヶ月程経ったが、解決法はみつからない。

2021年03月18日LKM博士
講演連発

3月は、いわゆる学会の季節である。
今週、来週と4回の講演を予定している。
特に大変なのが来週で、以下の学会の各セッションでお話する。

3月22日 
日本化学会春季年会 イノベーション共創プログラム 「診断・予防科学が切り拓く未来のヘルスケア」

3月23日
第94回日本細菌学会総会 ワークショップ2:「腸内微生物叢の今」

3月23日
第94回日本細菌学会総会 若手研究者支援シンポジウム2: 「研究環境の選択と適応
-テーマの探し方、付き合い方-」

いずれもオンライン開催で、それぞれメインテーマにあわせて私の研究成果を中心にお話させて頂く予定である。若手研究者支援シンポジウムでの講演依頼は、「もう、俺、若手じゃないってことね」と感じさせられた。

お気づきの方もいるだろうが、3月23日は同じ学会で2回である。
しかも、ワークショップ2と若手研究者支援シンポジウム2は同時刻(13:00~15:00)に並行開催される。
ということで、私の講演時間がオーガナイザー間で調整され、ワークショップ2では最初の演者、若手研究者支援シンポジウム2では最後の演者となる。

リアル学会会場であれば、会場移動を伴うが、特に大きい学会の場合は建物移動が生じることもあるが、幸いオンライン開催なので、パソコン上でたった1クリックで会場移動ができるので助かる。

そうはいっても、私は基本的にはオンライン開催否定派である。

準備がちょいとしんどい。
人気者は辛いぜ(苦笑)

2021年02月05日LKM博士
書籍がでました!(腸内微生物叢最前線) (続編:綺麗な図)

昨日紹介した「腸内微生物叢最前線 ~健康・疾病の制御システムを理解する~」
の図についての余談を少し書く。

昨日紹介した通り、執筆にあたり綺麗な図が要求された。
そこで私は3つの図を作成したが、図2として載せている以下の図は、週末返上で2日間パソコン前に座って作成した力作である。

20210205.JPG
(著作権等の問題があるので、本ブログでは敢えてはっきり読めないように載せている。悪しからず)

この図は、編集部から「非常に美しく仕上がっているので、編集部としては改変・編集を一切入れずに掲載させて頂きたい」といわれた(自慢)。

「ポリアミンの動脈硬化予防機構」とした本図は、何年間も私のウンコ色の脳内にしか存在せず、何かあるごとにアップデートし続けていた複雑なメカニズム(一部推測を含む)を具現化したものである。

ポリアミン(polyamine)を生体に供給すれば、なぜ、動脈硬化が予防できるのか?
主として、以下の4つを図で解説している。
1.血管内皮細胞と血管平滑筋細胞内でポリアミンによりオートファジーという現象が促進され、それら細胞の健常性が維持できる。特に血管内皮細胞が健常であることは血管柔軟性の維持に繋がる。
2.悪玉コレステロールが血管組織内侵入すると、それを退治するために免疫細胞が血管組織内に入ってくる。これが動脈硬化のスタートであるが、ポリアミンは免疫細胞が血管組織内に入るための接着因子の発現を抑える。血管内を流れている免疫細胞が血管組織内に入るには、一旦、血管壁にくっつかねばならないが、くっつくための手を出さないようにするのである。
3.抑え切れず血管組織内に免疫細胞が入ってきた場合、多量に存在する悪玉コレステロールと戦うためにさらに仲間を呼び寄せる(伝令物質を作る)が、ポリアミンはその作用を抑える。(際限なく侵入してくる悪玉コレステロールとそれを退治する免疫細胞との終わりなき戦いは、悪玉コレステロールを細胞内に溜め込んだ多量の免疫細胞の死骸を量産し、それがプラーク(塊)となり、その結果、血管内腔が狭く、且つ血管壁が硬くなる。まさにこれがアテローム性動脈硬化である。)
4.プラークが形成された場所が破裂すると、その部位に血小板が集まり、それが固まり血栓となる。ポリアミンはここでも活躍し、この血小板の凝集を抑える作用がある。

つまり、ポリアミンは、一つの作用ではなく、二段、三段、四段構えで動脈硬化を予防するのである(一部、証明されておらず確認中の箇所がある)。

ふ~っ 図の自慢をするだけのつもりが、少々熱く書いてしまった。
ご参考まで。

2021年02月04日LKM博士
書籍がでました!(腸内微生物叢最前線)

腸内微生物叢最前線
~健康・疾病の制御システムを理解する~
内藤祐二編集
診断と治療社

が、先日(2021年1月10日)に発行された。

私は、
各論V 心・腎・血管系疾患と腸内微生物叢の関連
の箇所で、
「腸内微生物叢の代謝産物と動脈硬化」
というタイトルで執筆した。

腸内細菌が作る物質(代謝産物)と動脈硬化に関する最新知見、その中でも近年注目されているポリアミン(polyamine)の作用を解説し、それを利用してどのように予防するのかを紹介した。

他の先生方も最新知見を惜しみなく紹介されている。
罹患者の多い一通りの疾病と腸内細菌の関連性について、専門家が初学者向けにやさしい表現で解説している。そして、全ての項目で、カラーの分かりやすい図が掲載されており、理解が深まる。何しろ、わかりやすい図を用いての解説は編集部の強い意向であったため、全編を通して綺麗な図が並んでいる。

本体価格5000円。
この分野は日進月歩につき、最新知見は常にアップデートせねばならない。
この価格で最新知見が一通り得られる一冊、お薦めです!
自身が絡んでいなくても、おそらく見つけ次第購入したであろう逸品である。
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2021年01月25日野菜作り
2020年度野菜作っています5

花蕾を食べるタイプの野菜の変わり種で良質なものが収穫できた!
(花蕾は「からい」と読む。つぼみのことである。)

ロマネスコである。

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幾何学的と表現するのだろうか? 独特の複雑極まりない形状である。
色も他の野菜とは少し異なる黄緑色で美しい。
不思議なくらいに他人に見せたくなる野菜で、畑で収穫時に50mほど離れて作業している人に見せて自慢してしまった。

私は最近までロマネスコの存在は知らなかったので、品種改良で新しくできた野菜かと思いきや、少し調べてみると、ヨーロッパではイタリアを中心に16世紀頃から存在して伝統野菜らしい。
ブロッコリーとカリフラワーの掛合わせとするのが一般の農家や家庭菜園をする人達の間では通説のようであるが、少々違和感がある。確かに色や形状は、両者の中間のような性状を示しているが、両者間で交配が成立した結果とするのは短絡的過ぎないか?
育てていると、ロマネスコは様々なポイントでブロッコリーよりカリフラワーに近いと感じる。私は、ロマネスコはカリフラワーの突然変異体と推測している。通常の自然発生的な突然変異で生じた変異体が、たまたま人の手で植え継がれたと推測している(ブロッコリーの遺伝子が半分混じった品種改良的なものではないという意味)。
ちなみに、ますます混乱するが、カリフラワーはブロッコリーの突然変異で生じたとするのが通説である。もう一つ書くと、ブロッコリーはキャベツから品種改良されたとされている。さらに、そのキャベツも・・・(止めておく)
つまり私は、ブロッコリー→カリフラワー→ロマネスコの順でこの世に登場し、たまたま特殊形状が強まったものが人の手で作物化されたと推測している。つまり、ロマネスコはカリフラワーよりブロッコリーに近縁なのではなく、むしろ遠縁であると思っている。
と書いたものの、今は簡単にゲノムを解読できる時代なので、野菜関連分野の研究者が調べれば簡単にわかるような気がする。
私が知らないだけで、専門家の間では既に結論が出ているのかもしれない。

ややこしい話は置いておいて、ロマネスコは私の想定より美味であった。
食感はカリフラワーに近く、やさしい甘さが際立つ。栄養価も高いようである。
サラダとフリッターで食べた。

黄色いカリフラワーも収穫!

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こちらは白いカリフラワーの品種改良品と考えて問題ないであろう。
おそらく気持ちの問題であろうが、白いカリフラワーより美味しかった。

2021年01月21日LKM博士
寒いんです

年末年始は帰郷も自粛し、1月4日から黙々と働いている。
研究所の外部での仕事の機会が激減し約1年、開き直って、集中が必要な仕事ができるチャンスと捉え、研究業(実験すること、執筆すること、調べること)に励んでいる。
個人的には、かなり仕事がはかどっていると満足している。

そのような年始に困ったことが発生している。
年明け初日から、エアコンの調子が非常に悪い。
たちが悪いのは、完全に壊れているのではなく、寒い時間帯にエラーが出て働かないという点である。室外機が寒さに負けて働かないようだ。「準備中」と表示される。寒い朝は、室内の温度計は6℃を示していた。
しかし、11:30頃~15:00頃、おそらく外気が10℃近くに上昇している間はよく働く。
それでは困る。
電気ヒーター等で対処しているが、頻繁にブレーカーが落ちて、我々を満たすパワーでの使用はできない。暖かいというレベルにはなかなか到達しない。
しかも、修理が1月末までできないと・・・。

とにかく寒い。

おかげで足の指先は、しもやけになった。
ここでも開き直って、久しぶりのしもやけの痛痒さを楽しんでいる。

今年もよろしくお願い致します!