協同乳業研究所 農学博士 松本光晴のブログ

ビフィズス菌LKM512研究スタッフ松本光晴博士が
お腹のためになる情報をお届けします。

2011年08月25日LKM博士
ほな、論文解説しますわ④ ―結果(大腸で何が起こったか)―

寿命が伸びたのは良いのですが、ちゃんと仮説通りなのかを検証しなくてはなりません。
ですから、ここからが大変なんですよ。
研究もですが、皆さんにわかり易く説明するのが・・・。

ややこしいことは全て省きましょう。
まず、投与したLKM512がガンガン増えて、腸内菌叢が変わって、腸管内のポリアミン濃度が上昇していました。
予定通りなのですが、結果が出るまで心配なもので、ここで「ホッ」としました。

それで、大腸を調べると、LKM512を与えていないかったグループは、色が悪くなり(若いマウスは薄いピンクかかった肌色ですが、どす黒い色になっていた)、糞便が溜まっている個体が多かったのです。
また、ピンセットとハサミで腸を摘出するのですが、
手慣れた若いマウスを扱っている感覚で、腸を軽くひっぱりながら周囲の組織から切り離す作業をすると、ブチっと切れてしまうのです。腸の組織自体がもろくなっているのです。
しかも臭い。
「ゲッ、なんじゃこれ? くっさーっ」
それに比べてLKM512投与群の腸の綺麗な事、扱いやすい事。感動しました。
言葉では伝えるのはこれが限界なので、論文の図2(Figure 2)のAを見て下さい。
必見です!→米国科学「PLoS ONE(プロスワン)」掲載図

それで、大腸の組織切片を作製して観察することにしました。
簡単にいうと、大腸を薄く切って、細胞の様子などを観察したのです。
薄く切るとはどれ位か?
2-3 μm(マイクロメートル)です(1 μm は1mmの1000分の1)。
大腸をホースに例えると、めちゃくちゃ薄い輪切りにするイメージですね。
ふわふわ飛ぶ位で、透けている薄さです。
それを染色して、顕微鏡で観察するのです。
組織切片を作るのは職人技で、結構大変なのですよー。

すると、LKM512投与群は若い個体と同じような状態でしたが、そのブチブチ切れる対照マウスの大腸は、細胞の様子もボロボロになっていたのです。
また、腸を守る粘液を出す細胞(杯細胞という)は、LKM512投与群は綺麗に並んでいるのですが、対照群は数が激減していました。
これも写真を見て頂けるとよくわかると思います。図3(Figure 3)のAです。
米国科学誌「PLoS ONE(プロスワン)」掲載図
左がLKM512、右が対照群の写真です。

上の写真では、対照群の大腸の絨毛が完全に崩壊しているのがわかると思います。
下側の写真で紫色に染まっている細胞が粘液産生細胞です。LKM512投与マウスでは、この細胞がびっちりあるのに対照群では無いですよね。粘液分泌できません。

みなさんの大腸、大丈夫でしょうか?

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